【建築豆知識11】 標準仕様のお話し
いつもブログをお読みいただき有難うございます。
あんじゅホームの菅原です。
家づくりに関する基本的なお話を、建築士の実務目線からお届けしています。
11回目の今日は「標準仕様」です。
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標準仕様とは
昨日は坪単価のお話しをしましたが関連する項目で「標準仕様」があります。
各会社さんにより仕様の設定が異なります。
分かりやすいところでは自然素材をメインで使う会社、ローコストの住宅会社、
それ以外ではトイレが2ヶ所標準とか、樹脂サッシが標準、カーテンが標準など。
では、そもそもなぜ標準仕様を決めているのでしょうか?
標準仕様を設定する理由
キッチンやお風呂などの住宅設備、床材や内装建材、外壁、窓、ガラスなど
家1棟分の仕様を列挙するととんでもない数になります。
住宅設備のメーカーさんだけでも数十社、そして各社とも数点のシリーズがあるので
キッチンだけでもおそらく100近くの選択肢があります。
これをお風呂、洗面、トイレと全メーカー、全種類から選ぼうとすると見積りが大変です。
標準仕様を決めることで建築工事費用の見積りを簡素化することができます。
構造体にも標準仕様がある
また建物の構造体に関わる部分、例えば、柱・梁の材質、基礎の鉄筋径や間隔
使う釘の長さまで実は細かく決めています。
本来の建物見積りは、これら材料の数量を拾い出し、単価を掛けて算出するべきです。
例えば、柱材1本当たり3000円が60本、980円のボードが120枚・・・など。
しかし、建築資材の価格は常に変わるうえ実際には下地材などで使う木材(羽柄材といいます)までを正確に算出することは不可能です。
なのである程度は一式工事という項目となります。
標準仕様から坪単価を算出する
建物基礎のコンクリートや鉄筋量、構造体の柱や梁、下地で使う羽柄材などの全ての建築資材
職人さんによる施工手間代
住宅設備機器や扉などの建材を全て標準仕様として設定したうえで
床面積で均したものを坪単価として算出し、床面積を掛けて建物本体価格を出します。
細かいことを言うと天井までの壁なのか、腰壁なのかで金額は変わりますが簡略化のため坪単価としては同じにしています。
標準仕様で選ぶメリット
標準仕様はメインで使う設備なので基本的に価格が安くなっています。
水廻りであればLIXILやTOTO、内装建材であればパナソニックや大建工業など
住宅会社と取引をしているメーカーから大量に仕入れるため安価で提供することが出来ます。
オプションのデメリット
標準仕様以外のものから選択する場合は、いわゆるオプション工事となります。
水廻りをタカラスタンダードやクリナップから選びたい。
内装建材を造作にしたい。
などの場合は通常取引をしないメーカーから仕入れをしたり、造作の手間が掛かったりなど割高になります。
標準仕様以外で選ぶ時の注意点
住宅業界の裏話になりますが
会社さんによっては、標準仕様でキッチンやお風呂、扉1枚の価格がいくらの設定なのか明細を開示してくれないところもあります。
ひどいケースだと、見積り明細で「建物本体価格 一式 ○○円」だけだったりします。
構造体や下地材まで数量を拾うのは非現実的ですが、ある程度は個別明細までして欲しいものです。
明細が提示されないまま請負契約後に設備変更した時、そのオプション金額が妥当かどうかが判断できません。
当社の場合は、作業の効率化のためにある程度は坪単価で算出していますが、ご要望に応じて小項目の明細のご提示をしております。
また、メーカーオリジナル商品にも注意が必要です。
確かにグレードが高く、オシャレでお手頃な設備ですが
仮に不具合が生じた時はそのメーカー以外は修理できないことになります。
修理費用、メンテナンス費用が妥当なのかこちらも判断ができません。
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坪単価・標準仕様はブラックボックスです。(住宅会社に勤める私が言うのもなんですが)
いかに安く見せるか、いかにお得に見せるか。で坪単価が変わってきますし
いかに利益を上げるか、でオプション工事の金額を設定することが出来ます。
大切なことは、ご契約の前ならきちんとした見積り内容であること
ご契約の後なら元々の金額がいくらだったのか説明を求めること。です。
形のないもので請負契約を交わすからこそ信頼関係が大切ですね。